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最高裁判所第三小法廷 昭和60年(行ツ)178号 判決

埼玉県八潮市中央一丁目一番地二

八潮中学校内

上告人

伊藤隆男

埼玉県越谷市赤山町五丁目七番四七号

被上告人

越谷税務署長

荒井一夫

右当事者間の東京高等裁判所昭和六〇年(行コ)第一八号所得税更正処分取消請求事件について、同裁判所が昭和六〇年八月八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することがでさ、原判決に所論の違法はない。所論違憲の主張は、予算に基づく国費の支出の違法が租税の徴収の違法をもたらすことを前提とするものであるところ、そのように解することはできないから、その前提を欠くものであり、失当である。論旨は、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 安岡滿彦 裁判官 伊藤正己 裁判官 長島敦)

上告人の上告理由

控訴審判決の理由は、原審判決のそれと同一であるとのことなので、上告理由としては、関係する法の条文を明示する以外、控訴理由を繰り返す他かは無い。

原審判決は、徴税行為と予算編成について、両者が、それぞれ異なつた法律に基づくものであると言う主張をその拠り所としているが、この場合の「基づく」と言う術語の使用は、その場限りであり、従つてその術語を用いて作られた主張も反証可能性に欠けるものである(「控訴状」pp一―三参照)。これは判決理由に齟齬が在ることになるから、同判決は民事訴訟法第三九五条第一項の六に違反している。

更に同判決に拠ると、憲法第九条第二項は軍事費の予算化のみを禁止しているとのことだが軍事費は禁止するものの、その財源確保については禁止しないと言うならば、結果的に憲法違反の軍事政策を認めることになる(同pp三f参照)。これは憲法第九条第二項の解釈を誤つたものであるから、同判決は民事訴訟法第三九四条に違反している。

尚、控訴審判決に拠れば、「控訴理由は、原判決理由を正当に解釈せず若しくは独自の見解により原判決を非難するもの」だとのことだが(控訴審「判決」pp二f)、原審判決理由についての上告人の解釈に誤りがあると言うならば、それを論理的、経験的、或るいは法的に反証すべきであるが、そうしないのは、後藤静思、奥平守男、橋本和夫、各氏の知的怠惰である。また、裁判に於いて重要なのは、弁論の正当性であつて、弁論への多数者の同意ではない。

以上

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